スチレンって何だ。

インスタントラーメンと言えば、誰でも一度は食べたことがあり、その手軽さ・便利さから食事の代わりに したり、ちょっとお腹の空いたときなど、お世話になっている人は多いと思います。味も各社とも大変工夫を凝らしており、かやく・調味料・ 調味油などもオリジナリティのあるものばかりです。

さて、このインスタントラーメンの中には発泡スチロール製のカップに入って売られているいわゆる「カップ めん」があります。この発泡スチロールの原材料はポリスチレンといって、スチレン分子のエチレン基が重合して高分子となったものです。 このスチレンは電気製品などの梱包やその他様々な用途で発泡スチロールという形で使われています。ちなみにスチレン分子1つのときは「 スチレンモノマー」、2つ付くと「スチレンダイマー」、3つ付くと「スチレントリマー」と呼びます。これらはポリスチレン中に微量で すが含まれています。このうちスチレンモノマーはWHO(世界保健機関)IARC(国際がん研究機関)が人に対して発ガン性の可能性があるとする2Bランクに指定してお り、日本国内では海洋汚染および海上災害の防止に関する法律、毒物及び劇物取締法、悪臭防止法により規制されています。

いま、このスチレン(スチレンダイマー、スチレントリマー)が環境庁がまとめた67種類の「環境ホルモンと疑われている物質」の中 に入っています。しかし、いきなり環境ホルモンと言われても何のことかさっぱり分からない人もいると思います。そこでまず最初に環境 ホルモンとは何かということからお話したいと思います。

環境ホルモンって何だ。

環境ホルモン、その正式な名称は『外因性内分泌攪乱化学物質』といいます。体の外にある物質が原因で、ホルモンすなわち内分泌が 、かく乱すると言う意味です。環境ホルモンの定義は日本では、環境庁が1998年5月に発表した 「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」、 において、「動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質」と しています。 

つまり、体の中に入ると本当のホルモンのようにふるまい、本来のホルモンの働きを阻害するのです。ポリ塩化ビフェニール(PCB) やDDT、ダイオキシン類のほか、界面活性剤の成分であるノニルフェノール、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の原料であるビスフ ェノールA、塩化ビニル樹脂の可塑剤に用いられているフタル酸エステルなど現在でも使われているものも「環境ホルモンと疑われている 物質」の中に入っています。ここでホルモンとは何かについてもお話しします。


(三浦定則氏のホームページ「環境問題について」)

ホルモンって何だ。

人間のからだは、およそ60兆個の細胞からできています。これらの細胞がバラバラに機能を果たしていては、生命を維持することは できません。このため、体のそれぞれの細胞に何らかの情報を送って、その機能を発揮するよう指示し、環境の変化に対応します。

そのような生体の調節機構を担っているのが「神経」と「ホルモン」なのです。神経は電気信号で瞬時に伝わります。沸騰しているヤカン に指が触れても、考える間もなく、指がヤカンから離れるのは、神経による情報伝達のおかげです。

一方、ホルモンは脳下垂体や甲状腺、精巣、卵巣などの内分泌器官で、必要に応じてつくられる化学物質で、血流から特定の標的機関に たどりつき、そこでDNAにタンパク質を生成させます。ただし、血流を介さずに、局所で生成されて、そこで機能を発揮する局所ホルモン の考え方も提唱され始めており、ホルモンの概念はまだ漠然としています。   

ホルモンには化学構造から、おおまかに3種類に分けられ、1番目は男性ホルモン(アンドロジェン)や女性ホルモン(エストロジェン )、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン。2番目は副腎髄質から分泌され興奮作用を引き起こすアドレナリンや甲状腺ホルモンなど のアミノ酸誘導体ホルモン。3番目のペプチドホルモンはアミノ酸が鎖状に結合した構造をし、脳下垂体から分泌される成長ホルモンなど が含まれます。

ホルモンの分泌は多すぎても少なすぎても駄目で、体が不調になったり、場合によっては恐ろしい病気にもなります。日本人の代表的 な生活習慣病の1つである糖尿病も、膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインシュリンというホルモンが作れなくなることで起こる 病気です。糖尿病の恐ろしさはよく知られており、血管に瘤ができたり、血管が硬くなったり、弾力性を失ったりして、合併症で失明や 、人工透析が必要な腎不全などの取り返しのつかない事態になる恐れもあります。

ホルモンは細胞にあるホルモン受容体(レセプター)と結合して、細胞内のDNA(遺伝子)に働きかけて、目的のタンパク質を 生成します。従来ホルモンは、ある特定のレセプターとしか結合しない1対1の関係と思われていました。しかし環境ホルモンの大部分は 、本来、ホルモンが結合するはずのレセプターに結合して、遺伝子に誤った情報を伝えてタンパク質を生成させます。本来のホルモンと 似たような化学構造を持っているため、間違って作用することがあるのです。しかし化学構造の類似性から必ずしも説明がつくというわけ でもありません。

環境ホルモンは、本来のホルモン作用を乱し、生殖能力を低下させ、成長や発達も遅らせます。また免疫系の働きを弱めたり、学習機能 の低下を招くこともあります。一般に環境ホルモンの影響はエストロジェン(女性ホルモンの一種)作用が有名ですが、性ホルモン以外の ホルモンの影響についても言われています。

(中経出版 図解「環境ホルモンを正しく知る本」 著者 吉田 昌史 1998年8月21日)

再びスチレン。

ではスチレン(スチレンダイマー、スチレントリマー)は一体何が問題なのかというと、これがはっきりと科学的に証明されてはいませ ん。しかし、「安全だ」と言いたい人達が調べているのはエストロジェン作用などの性ホルモン作用の攪乱だけです。さきほど環境ホルモン 作用には性ホルモン作用だけでなく、他にいろいろあると言いました。性ホルモン作用が無かったからと言って、環境ホルモン作用が無いと 言い切るのは無理があります。

当時1998年5月、新聞の全面広告でカップめんからは、スチレン(スチレンダイマー、スチレントリマー)は出ないとありましたが これについても、環境ホルモンに関係する研究者、業界団体、国内官庁、OECDWHOなどの国際機関から人を集めて、1998年6月29日から30日に東京の国連大学で催された 「内分泌攪乱物質をめぐる生活と食の安全についての国際シンポジウム」において同年6月29日 国立医薬品食品衛生研究所の河村葉子氏が、ポリスチレン製のカップめん容器にめん やスープなどの内容物を入れて熱湯を注ぐ試験の結果を発表したことで決着がつきました。

結果は、8種類のうち5種類の容器から普段私たちが食べている状態で、汁やめんなどからスチレンダイマー、スチレントリマーが検出 されました。

(ダイヤモンド社 「環境ホルモンって何だろう」 編著者 地球環境情報センター 1998年9月3日)

最後に。

重ねて言いますがスチレンは環境ホルモンではないかと疑われている物質であり、科学的に環境ホルモンであるということが完全に証明 されてはいません。しかしながら、疑わしい物質であるのは間違いありませんし、そのような物質を使ってほしくはありません。現に日本 のメーカーもヨーロッパでは、より安全なポリプロピレン製のものを販売しているということなので、日本国内でもそうして欲しいと思いま す。1個人で出来ることはカップめんではなく、袋入りのものを買う、もしくはラーメン屋で食べるといったことぐらいしか出来ませんが、 大勢の人がそれをするようになれば、メーカーも市場の選考に対応せざるをえなくなるはずです。

私は決してインスタントラーメンが嫌いではありません。むしろ大好きです。ただ絶対安全と分かっている紙製もしくはその他の代替品 にして欲しいと言っているだけです。メーカーさんには、そこのところを考え直して頂きたく、思います。


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